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夕暮れに手を振る君

夕方の公園で、偶然彼に会った。部活帰りだったのかジャージ姿で、自販機の前で水を買っているところだった。私もたまたま友達と帰る途中で、同じ公園を通り抜けていた。目が合った瞬間、彼が軽く手を振ってくれて、その自然な仕草に胸が熱くなる。友達が「知り合い?」と何気なく聞いてきたけれど、私は笑って「うん」と答えるのが精一杯だった。

彼と話すのは、いつもほんの数分。廊下ですれ違ったときや、委員会の仕事を一緒にするとき。でも、その一言一言が心に深く刻まれていく。今日は「元気?」と声をかけられただけなのに、それが頭の中で何度もリフレインしている。声のトーンや、少し笑った口元まで、思い出すたびに胸が高鳴って落ち着かない。

最近、彼のことを考えながら眠るのが習慣になってしまった。ベッドに入ると、今日の会話や表情を思い出しては、もし次に会ったらどんなことを話そうかと想像する。勉強や友達のことも大切なのに、気づけば心の大部分を彼が占めている。そんな自分に驚きつつも、どこか嬉しくもある。

恋は特別なドラマのように華やかではないけれど、私の日常を静かに塗り替えていく。歩く道が少し輝いて見えたり、風が心地よく感じられたり、世界そのものが優しく変わっていく気がする。彼にとって私はただのクラスメイトかもしれないけれど、私にとって彼は、毎日を生きる理由のような存在になっている。

この気持ちを伝える日はまだ来ない。勇気もないし、何よりこの淡い瞬間を壊してしまうのが怖い。でも、だからこそ日記に書き留めておきたい。彼の笑顔に救われた今日のことを。未来の私が振り返ったとき、「確かにここから始まっていた」と思えるように。

——恋をしている今の私を、ちゃんと残しておきたい。

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